まるで植栽されたかのように立ち並ぶビルの群れ。
都会とは、都市とは、ビルの群生を指す言葉でもある。
大きなビルの前には、石が置かれ、
そこには必ず「定礎」という二文字が刻印されている。
これは、ビル建設の仕上げの時期にこれまでの工事の無事を祝し、
完成までの安全とビルの継続的な存続、
そしてその会社の興隆発展を祈願するものだ。
石積み建築が本家である欧州ではじまったもので、
石造建築の基準となる隅の礎石を鎮定する儀式に由来している。
本式の定礎式では、石の下に鉛でできた定礎箱が埋め込まれ、
建物の平面図や当日の新聞、通貨、社史、氏神様のお札などが納められる。
人々の祈りを一身に受け、ビルの礎(いしづえ)となる大切なその石は、
東南の隅に鎮定されるのを常とする。
ビルが林立する都会で方向を見失っても、
定礎石が羅針盤となり、正しい方角を導いてくれるのである。

明治40年頃 大正13年頃 三代目 梅吉 井村工務店特命工事
昭和12年8月竣工